パミールの不具合は裁判で勝てる?社会問題になったパミール問題を解説
パミールの不具合は裁判で勝てる?社会問題になったパミール問題を解説
社会問題となっているニチハの屋根材「パミール」をご存じでしょうか?
パミールは施工して10年前後で「層間ハクリ」や「釘の腐食」が発生し始め、屋根自体がボロボロになってしまい、最悪の場合は雨漏りするといった問題があります。
多数のクレームが寄せられ、裁判にまで発展したケースもありますが、製造元のニチハは責任を否定しており、泣き寝入りする方が多いのが現状です。
この記事では、パミールによる不具合の対処法も劣化の進行度合い別に解説していきます。
ニチハのパミールの問題とは?
2006年にアスベストを含む建材の使用が禁止されたことにより、屋根材メーカーはノンアスベストの屋根材を試行錯誤の上販売しました。
その一つでもあったニチハのパミールは全国に広く流通しましたが、年数が経つにつれ「層間ハクリ」や「釘の腐食」といった不具合が起こってしまう耐久性の低い屋根材でした。
同時期に販売されたノンアスベスト屋根材の中でもパミールの不具合報告は明らかに多く、裁判にまでも発展し、社会問題となっていきました。
ニチハはパミールの不具合を「経年劣化」としています。実際に多くの屋根材の保証期間が2〜5年ということもあり、仕方なく自己負担でのリフォームをせざる得ないことの方が多いのが現状です。
パミール屋根を販売していた「ニチハ」とは?
ニチハとは1956年に設立された住宅用建材の最大手メーカーのひとつです。
アスベストに含まれる発がん性物質による社会問題が起きた当時、屋根材市場でのシェアは低かったニチハですが、いち早くノンアスベストの屋根材の開発に成功しました。
ノンアスベスト屋根材として主流化した「パミール」は1996〜2008年まで製造販売されました。
パミールの施工から7年ほどたった頃、各所で不具合が報告されましたがニチハはこの不具合を「経年劣化」として、製造責任には否定的な姿勢です。
パミールで不具合が起こった原因
パミールにはアスベスト繊維に代わり、つなぎとして草や竹などから抽出するパルプ繊維が使われました。
パルプ繊維にはアスベストのような体への悪影響はありませんが、吸水性が高いという特性があります。そのため水分を吸って劣化してしまい、層間ハクリが起こる原因となっています。
ノンアスベスト製品は、開発の技術や長期使用の検証を十分にしきれていないために、テレビでも報道されるような社会問題になってしまったと推測できます。
パミールで起こる3つの不具合
パミールを使った屋根で多くみられる不具合は「層間ハクリ」と「釘の腐食」の二つです。
どちらも放っておくと劣化が進行してしまう現象で、通常の屋根材でおこなわれる塗装によるメンテナンスも全く意味がありません。
最悪の場合、「層間ハクリ」は雨漏り、「釘の腐食」は物損や人身事故といったトラブルを起こしてしまうリスクがあります。
それぞれの不具合の特徴、そしてダブルで起こってしまった場合についても詳しく解説していきます。
塗装業者の中にはパミールと分からずに塗装してしまう業者もいるので、正しい知識で断りましょう。
層間ハクリ
層間ハクリはパミールの不具合で最も報告されている現象です。
先端部分に雨によってたまった水分が吸収されてしまい、ミルフィーユ状にめくれ上がっているのが目視で確認できます。
また、屋根材の表面に直径数ミリのクレーター状の穴も発生してしまうこともあります。
多くは施工して10年前後で現れ、放置してしまうと更に屋根材がボロボロと崩れていき、屋根材自体が消失するので雨漏りの原因になっていきます。
釘の腐食
パミールの施工には、耐食性表面処理(ラスパート処理)が施された専用の釘が使用されました。
この専用釘には一部、メッキ塗膜厚不足の釘が混入してしまい、通常の釘に比べサビ・腐食が起こりやすくなるということが起きています。
腐食により釘頭がなくなると、急に屋根材が落下してしまい近隣の建物や車に衝突してしまったり、歩行者を怪我させてしまう危険性があります。
パミールのダブル不具合
層間ハクリによりパミールの内部には雨水が入り込んでしまい、そこから釘の腐食も起きているというダブル不具合の報告も多くあげられました。
ニチハはパミール本体と専用釘の腐食に関連性はなく、釘の腐食はあくまでも「耐食性表面処理のメッキ厚が薄いものが混入していた」と主張しています。
専用釘を製造した若井産業株式会社はこれに反発しており、2社は6年以上も続く裁判に発展しました。
参考【[スクープ]下請けのくぎかニチハの屋根材か、落下原因巡り6年超の裁判】
パミール屋根の故障は裁判で勝てる?
ニチハはパミール本体の不具合を「経年劣化」との見解をだし、製造責任を否定する姿勢をとっています。
一般的に、屋根材は多くのメーカーが通常2〜5年の保証期間としていて、10年前後で起こってくる劣化は法的には保証外となってしまいます。
専用釘はニチハによりリコールされていますが、パミール本体はリコールされておらず、仮に裁判を起こしても期待する結果にはなりづらいでしょう。
建築したメーカーや工務店の対応は?
屋根材の保証は消費者ではなく、建設したメーカーや工務店におこなわれます。このことから建設したメーカーや工務店は屋根の補修を請け負ってくれますが、消費者にとって不都合な面もあります。
建設した会社で補修工事を請け負っても、結局は所属する下請け会社へ工事を発注することになるので、その分費用が高くなってしまいます。普段建設会社と接点のない方にとって難しいことですが、自らが専門業者を探して直接依頼する方が、より安く、より質の高い補修を受けることができます。
自宅の屋根がパミールかどうかを見分ける方法とは?
パミールを含むスレート屋根材はどれも似たような形状をしていますが、パミールの見た目には分かりやすい3つの特徴があります。
重なっている上部に「パミール」または「ニチハ」と表記されている。
横幅が91センチで、表面に薄く縦状に線が入っている。
屋根の先端部分が凸凹の形状をしていて、凸と凹の幅が等間隔。
※ 自らご自宅の屋根に上って確認するのは大変危険です!
パミールなのかを確認したい場合は専門業者に必ず依頼しましょう。
自宅がパミール屋根だった場合に、とるべき行動は
?
「自宅の屋根材がパミールだった。今後どう対処したらいいのか。」
「業者が塗装メンテナンスで劣化のスピードを弱められると言っているが本当か。」
大切な自宅の屋根に耐久性に問題のあるパミールが使用されていると分かれば、不安になってしまう方がほとんどでしょう。次はパミールだと判明した際にとるべき行動について解説します。加えて、絶対にやってはいけない行動も一緒に解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
パミール屋根が劣化している場合は、できるだけ早く専門業者に相談を
パミールに層間ハクリや、本体のズレ・脱落が確認されている場合、できるだけ早くリフォーム会社に相談しましょう。まだ劣化がそこまで確認されないパミールもそのまま放置しておくと、層間ハクリが進み、雨漏りなどの重大なトラブルを招きかねません。
また、北側にある屋根は太陽が当たりづらく水分が乾きにくいので、南側に比べより劣化しています。軒先周辺も水分が溜まりやすいので劣化のスピードが早く、早急な点検が必要です。
屋根塗装はしない
パミール屋根に塗装しても意味はありません。
通常のスレート屋根では、軽いひび割れ・色褪せ・苔の付着があっても塗装によるメンテナンスで寿命を延ばすことが可能です。しかし、パミールは塗料がきちんと乗っていたとしても、そもそもの屋根材本体がミルフィーユ状に剥がれていってしまうので全く意味がありません。
屋根塗装では塗装前に高圧洗浄をおこなうことがあります。劣化が進んだパミールに高圧洗浄をしてしまうと層間ハクリは更に悪化してしまうだけでしょう。
知識のない業者や悪質な業者によりパミール屋根の塗装を提案されることがありますが、そういった業者には正しい知識を持って、断るのが最善といえます。
太陽光パネルの設置はしない
劣化が進行していくパミール屋根に太陽光パネルを設置することは、大きな事故にも繋がる可能性もあり、かなり危険といえます。
パミールを含むスレート屋根材は太陽光パネルを取り付ける際に、直接ボルトで穴をあけます。屋根材に直接穴を開けるという行為は耐久性の低いパミールにとって、雨漏りを引き起こす原因にもなります。
このような問題点に気づかず太陽光パネルを載せてしまい、悩まれている方も少なくありません。そうならないためにもパミールについて正しい知識を持った業者の選択は不可欠でしょう。
パミール屋根が故障・劣化している場合の補修方法は2つ!
では、実際にパミール屋根を補修するにはどのような方法があるのでしょうか。
パミール屋根を使用されている方は、工事の金額が気になるのはもちろん、次こそは耐久性の高い屋根材を使用して、今後も長く住み続けたいと考える方が多いでしょう。
「カバー工法」と「葺き替え工法」と2つの方法がありますが、劣化の進行度合いによってもできる補修は変わってきます。
納得のいく補修工事が施工できるよう、どちらの特徴もよく比較してみることをおすすめします。
カバー工法
1つ目の方法は、パミールの上から新しい屋根材を重ね張りするカバー工法です。
カバー工法はパミールを撤去する費用や処分費がかからないため、比較的安価にリフォームできることが最大のメリットです。パミールの販売元であるニチハも、対処法として自社で販売しているアスファルトシングル「アルマ」によるカバー工法を薦めています。「アルマ」本体はニチハより無償支給された事例もあり、カバー工法によって使用できれば、金額を最も安くおさえることが期待できるでしょう。
しかし、「アルマ」を含むアスファルトシングル屋根材やスレート屋根材の耐久年数は10〜20年程度となっており、カルバリウム鋼板などの金属屋根の耐久年数25〜35年と比べ、耐久性が低くなっています。
カバー工法にはさらに2つの方法があるので解説します。
直接下葺き材張りカバー工法
パミールの劣化があまり進んでいない場合、一般的にはこの工法が採用されることが多いでしょう。
下葺き材とは屋根材の下に敷かれている防水シートのことで、ルーフィングシートとも呼ばれています。この工法ではパミールに直接下葺き材を押さえつけるように固定していくので、屋根全体を一体化させ、強度を上げることができます。
下葺き材はシートの裏側が粘着シールタイプの製品もありますが、パミールが粘着するだけでは心許ないほどに劣化している場合においてはタッカーという釘のようなもので固定します。
しかし、それほど劣化しているパミールにタッカーを使用することは更なる負担を与えてしまうだけですので、あまりおすすめできません。
野地板増し張りカバー工法
野地板とは下葺き材のさらに下にある、屋根本体を保持するための下地部分です。
この工法ではパミールの上から新しく野地板を張り、その上から下葺き材、屋根材と張っていくので先述の下葺き材張りカバー工法に比べると割高になります。
パミールの劣化が進行して、下地部分の野地板にまで影響が及んでしまうと、雨漏りの原因になってしまうのでこのような対処が必要になります。野地板が傷んでいるかは、屋根の上を歩いてみると確認できます。歩くと足元がぶよぶよして、体が沈むようになる感じが傷んでいるサインです。
デメリットは野地板・下葺き材・屋根材と張っていくので、屋根自体の重みが約2倍になります。屋根の重み=必要壁数=耐震性と関連づいていくので、耐震性能に不安のある方はこの工法はやめた方が無難です。
葺き替え工法
カバー工法で補修するのが難しいほどに劣化の進んだパミール屋根は、葺き替え工法での補修をおすすめします。
野地板が腐食してしまった状態でカバー工法をおこなっても、根本的解決にはならなく、後にまた屋根の不具合が起きても原因が特定しづらくなります。
葺き替え工法はカバー工法に対し、屋根材などを撤去・処分する費用がかかってくるので費用が1.3倍〜1.5倍になります。この工法でも業者によっては、耐久性のあまり高くないアスファルトシングル屋根材やスレート屋根材を薦めてくるでしょう。
しかし、ガルバリウム鋼板などの金属屋根は初期費用こそ高くなりがちですが、サビのメンテナンスを正しくおこなえば、40年以上の耐久年数も期待できます。
屋根材の中でも金属屋根はとても軽量な建材なので、地震大国の日本において屋根が軽量化し、建物の重心が低くなることはいうまでもなく最大のメリットです。
パミールは問題の多い屋根材。自宅がパミール屋根とわかったら専門業者に相談を!
ニチハは製造責任を認めていないため、自宅の屋根材がパミールだと判明しても泣き寝入りとなり、自己負担での補修を進める方が多いのが現状です。
対処方法も屋根全体の劣化具合で大きく変わってしまい、悪質な業者に意味のない塗装をされてしまうことも少なからずあります。劣化状況を正確に知るためにも、専門の業者に屋根に上ってもらい、実際に確認してもらう必要があります。
パミール屋根の劣化を放置すると、雨漏りに加え、物損事故や人身事故といった重大なトラブルが起きるリスクがあるので、できるだけ早く全日本屋根パミール診断士協会(JPC)にお気軽にご相談ください。
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